こんにちは!「コンビニぐらし」の木内澄也です。 コンビニ業界に20年以上従事し、店長としても勤務時間管理やスタッフの労務トラブルに多く向き合ってきました。
「シフトは22時までなのに、いつも少し伸びる…」
「残業代って出るのかな?」
「タイムカード切ってから片付けするよう言われた…これって残業?」
コンビニバイトを始めたばかりの方から、こんな相談をよく受けます。 実際、私が店長時代に対応した労務相談の中でも、「残業」に関する質問は上位を占めていました。
コンビニバイトでも状況によっては残業が発生します。 ただし、法律的には”残業”と”残業代”には明確なルールがあり、多くのバイトスタッフがそれを知らずに働いているのが現実です。
この記事では、店長経験者の目線から以下について詳しく解説していきます。
- 残業が起きる理由と実態
- 残業代の仕組みと法律ルール
- サービス残業を避けるコツ
- 残業の上手な断り方
休憩時間の記事でも触れましたが、労働時間の管理はバイトにとって同じくらい大切な権利です。 きちんと理解して、自分を守りながら働きましょう。
コンビニバイトに「残業」はある?

バイトでも残業は発生する現実
「アルバイトだから残業はないはず」と思っている方も多いですが、これは大きな誤解です。
コンビニバイトでも残業は発生します。
実際、私の店舗では毎日のようにどのスタッフかしらが予定時間を超えて働いていました。 特に人手が少ない時間帯や、夜勤明けの引き継ぎ時などに顕著でした。
残業が発生する主な理由
- 交代スタッフが遅れてくる
- 納品作業が予定より長引く
- レジ締めや清掃が終わらない
- 新人への教育引き継ぎが長くなる
ただし、重要な点として「毎回のように残業が発生している場合は、店舗運営やシフト管理に問題がある」という点です。
私が店長時代に心がけていたのは、「残業が常態化しない運営」を目指すことでした。 なぜなら、残業が当たり前の店は、スタッフの疲労が蓄積し、離職率が高くなるからです。
「ちょっと長くなる」が法的には重要
コンビニの現場では「ちょっと片付けするだけだから」「10分程度だし」という感覚で、残業代を請求しないバイトが多くいます。
ここが落とし穴です。
法律上は、シフト時間を1分でも超えて働いた場合、それは「残業」としてカウントされるべき労働時間なのです。
- 21時までのシフトなのに21時15分に上がった → 15分の残業
- 23時59分に上がるべきが、翌日0時5分になった → 5分の残業
「こんな少ない時間でいちいち申告しづらい…」と躊躇してしまう気持ちもわかります。 しかし、そうした小さな残業が積み重なると、月間では数時間になることもあります。
残業が発生する主なパターン

1. 人手不足の時間帯にシフトが重なる
これは私が店長時代に最も頻繁に目撃した残業パターンです。
具体的なシナリオ
- 17時の交代スタッフが渋滞で遅刻
- 13時から勤務していたバイトが「交代を待てますか?」と店長に聞かれる
- 結果、17時15分まで勤務することに
特に夕方から夜間にかけてのシフト交代時に起きやすいです。 この場合、交代前のスタッフは「他人の遅刻のカバー」として残業させられることになります。
2. 納品・検品が予定より長引く
月曜と金曜の夜から翌朝にかけて、納品ボリュームが多くなります。 これは私の20年の経験を通じて、コンビニ業界の一般的なパターンです。
- 月曜夜~の納品:新商品の入荷があるため物量が多く、陳列場所を作る作業も発生
- 金曜夜~の納品:土日の需要ピークに向けた在庫補充
こうした時間帯のシフトには、検品や陳列に時間がかかりやすく=残業が発生しやすくなります。
私の店舗では月曜と金曜は、作業を納品時間の前後に割り振ることで、残業を極力減らす工夫をしていました。
3. 引き継ぎ・締め作業に時間がかかる
特に夜勤バイトから翌朝のシフトへの引き継ぎ時に起きやすいです。
具体例
- 夜勤明けのレジ締め作業が複雑
- 深夜に起きたトラブルの説明に時間がかかる
- 翌朝スタッフへ細かく引き継ぐ必要がある
夜勤についての詳しい記事でも触れていますが、深夜帯でトラブルが起きた場合、その報告と対応が朝のシフトまで持ち越されることがあります。
私の店舗では、引き継ぎ内容を「チェックシート」に事前にまとめておくことで、伝達時間を短縮し、残業を減らしていました。
4. 新人の教育中
新人が入ったばかりの時期は、どうしても業務が長引きます。
教育側のスタッフは
- 新人に作業を説明しながら進める
- ミスをフォローする
- 標準的なスピードより遅くなる
結果として、教える側が予定時間を超えて残ることになります。
私が店長時代に配慮していたのは、「新人教育期間は、教える側のスタッフを15〜30分早めに配置する」ということです。 こうすることで、教育に十分な時間をかけつつ、残業を避けられました。
残業代の仕組み(労働基準法)

法定残業と時間外労働の違い
多くのバイトスタッフが混同しているのが、「法定残業」と「時間外労働」の違いです。
労働基準法では以下のように定められています
条件 | 割増賃金(時給) |
---|---|
1日8時間超過 | 時給の125%(1.25倍) |
週40時間超過 | 時給の125%(1.25倍) |
22時〜5時(深夜) | 時給の125%(1.25倍) |
法定外の日の労働(6日目) | 時給の135%(1.35倍) |
ただし、コンビニバイトの場合は注意が必要です。
一般的に、コンビニバイトの1日の勤務時間は4〜8時間以内に収まるため、「1日8時間超過による割増」には当たらないケースがほとんどです。
しかし—— 重要なのはここからです。
シフト時間を超えた分は「残業」として扱うべき
「法定残業」には当たらなくても、シフト予定時間を超えて働いた部分は「時間外労働」であり、適切に時給を計算すべきなのです。
具体例で説明します↓
ケース1:通常の残業
- シフト予定:18時〜22時(4時間)
- 実際の勤務:18時〜22時15分(4時間15分)
- 処理すべき方法:15分分の時給をプラスして支給
ケース2:週40時間を超える場合
- 月〜金のシフトで40時間勤務となっている
- 金曜に予定時間を30分超過した
- 処理すべき方法:30分分を割増賃金(時給の125%)で計算
多くの店舗では、労働時間の管理はタイムカードやバーコードスキャンによるデータ管理となっています。
適切に出退勤を記録できていれば、上記のような残業分もこの通りに計算して支給されるはずです。
サービス残業は違法!よくあるグレーケース

明らかなアウト:こんな指示は違法
コンビニの現場では、知らぬ間にサービス残業をしているケースが多くあります。
店長や社員からよく聞く「アウト」な指示
「ちょっと片付けしてから上がって」 → 片付けも業務指示なら、働いた分は支給対象
「タイムカード切ってから備品補充しておいて」 → 明らかな違法。タイムカード後の作業も労働です
「今日は○時には上がれなさそう。ごめんだけど、○時まで残ってくれる?」 → 店長からの明確な指示なので、残業代を支給すべき
「引き継ぎはタイムカード後でいいよ」 → 業務上必要な引き継ぎは労働時間に含まれます
これらは全て、違法なサービス残業です。
グレーな場面:判断が難しいケース
一方で、判断が難しいグレーゾーンもあります。
グレーケース1:「制服のまま」での作業
- 営業終了後に制服のまま在庫確認している
- 「もう勤務時間外だから」と時給が出ていない
→ 判断:制服を着用したまま業務に関連した作業をしていれば、それは労働時間とみなされる可能性があります。
グレーケース2:「ちょっと手伝うだけ」の定義
- 社員が「ちょっと手伝って」と言って、レジ周りの清掃を頼む
- 5分程度のため、タイムカードを切ってから対応
→ 判断:店側からの明確な指示であれば、たとえ短時間でも記録に残すべき。ただし「自主的な協力」か「指示」かの線引きが難しい場面です。
グレーケース3:「休憩中」の作業
- 休憩室での休憩中に、突然お客様対応を頼まれた
- 対応時間は5分程度
→ 判断:休憩時間についての記事でも触れていますが、休憩時間中の業務指示は認められません。この場合は、休憩を延長するか、別途時給を加算すべきです。
身を守るためにすべきこと
サービス残業を防ぐため、以下の対策が有効です。
対策1:勤務時間の記録を自分でもつ
- スマートフォンにメモ:「火曜 18:00-22:15(15分残業)」
- 毎日の記録を取ることで、月間の残業時間が可視化できます
対策2:タイムカード・シフト表を確認
- 勤務表と実際の勤務がズレていないか、定期的にチェック
- 給与明細と照らし合わせ、残業代が計上されているか確認
対策3:社員や本部に相談
- 残業が常態化している場合は、信頼できる社員や本部に伝える
- 「この勤務形態は残業代が出ていないのですが…」と具体的に質問する
対策4:メールやLINEで記録を残す
- 社員から「残業してほしい」と言われたら、LINEで「承知しました。〇時までの残業で対応させていただきます」と返す
- こうすることで「指示」が記録に残ります
店長が見てきた「残業が多くなる店」の特徴

残業が多い店の共通点
20年間、多くのコンビニ店舗を見てきた経験から、パターンが見えてきます。
残業が多い店の特徴
1. シフト人数がギリギリ(余裕がゼロ)
- 最小限の人数で回すため、予期しない事態に対応できない
- 1人でも遅刻すると、他のスタッフが残業を強いられる
2. 納品時間が、ピークに重なる
- 月曜夜や金曜朝の大型納品と、営業ピークが重なる
- 納品対応と顧客対応を同時にしなければならない
この場合、納品時間帯の人員配置を多めにするのが有効です。
3. 引き継ぎが長い(会話・雑務含む)
- 勤務時間内に引き継ぎが終わらない
- 前のシフトがダラダラ残ったり、後ろのシフトが早めに来て残業になったり
4. 新人が多く、教育時間が長引く
- 繁忙期に新人を大量採用すると、教育負担が増大
- 結果として経験者が残業で対応することに
残業が少ない店の工夫
逆に、残業が少ない店には共通の「工夫」があります。
業務のルール化
- 引き継ぎ事項をシート化
- レジ締め手順をマニュアル化
- 納品検品のプロセスを明確化
柔軟なシフト運用
- 月曜・金曜などの作業の割振りを適正化
- 新人教育期間は教える側に時間的余裕をもたせる
- 交代時間を柔軟に設定(遅刻に備える)
コミュニケーション
- 予定時間内に上がれそうにない場合は、早めに伝える
- スタッフ同士で「今日は残業になりそう」と共有できる体制
残業を減らすコツ・上手な断り方

残業を断る時の伝え方
残業が常態化している店では、「今日も少しだけお願い」と言われることがあります。
無理な場合は、以下のような伝え方が効果的です。
NG な言い方 「できません」「疲れています」 → 店長に悪い印象を与えてしまいます
OK な伝え方 「このあと用事があるので、22時で上がっても大丈夫ですか?」 → 理由を示しつつ、相手に判断の余地を与える
「申し訳ございませんが、今日は用があるので時間通りで…」 → 丁寧で、相手も受け入れやすい
「火曜日なら残業できるので、その代わりで大丈夫ですか?」 → 代替案を提示することで、店舗の融通性も見せられる
実例:私が店長時代に経験したケース 新人バイトが「今日は用事があります」と早めに申告してくれたので、別のスタッフに対応を依頼できました。 一方で、何も言わずに定時に帰ったスタッフには、不信感が生まれました。
つまり、「早めの相談」が大切なのです。
残業を減らすための自分の工夫
店側の工夫だけでなく、自分でできることもあります。
自分の作業を効率化する
- レジ周りの清掃手順を工夫して時間短縮
- 品出しの順序を工夫する
- 慣れてくると、自動的に時間内に終わるようになります
引き継ぎ事項をメモ化
- 口頭で長く説明するより、メモに書いて渡す
- 次のシフトスタッフも読みやすく、時間短縮に
他のスタッフとの協力
- 時間が押しそうな時は、声をかけて手伝ってもらう
- その見返りに、相手が困っている時は手伝う
こうした「小さな工夫」が積み重なると、自然と残業が減っていきます。
よくある質問:残業に関するQ&A

Q1:15分の残業でも時給に計上されるべき?
A:はい、計上されるべきです。
法律上、労働時間は分単位でカウントされます。 ただし、多くの企業では「15分以下は端数処理」として扱うことがあります。
ポイント
- 法律上は「1分でもカウントされるべき」
- 実務では「30分単位」などの運用をしている店舗も多い
- 確認したい場合は、事前に店長に聞くのが吉
Q2:残業代が出ないまま数ヶ月経った。請求できる?
A:法律上、過去2年間は遡って請求できます。
ただし、トラブルを避けたいなら
- 記録を確認(自分のメモ、給与明細など)
- 店長や本部に相談して、計上忘れだった場合の修正を依頼
- 話し合いで解決できなければ、労働基準監督署へ相談
Q3:「休憩中の作業」は残業にカウントされる?
A:はい、カウントされるべきです。
休憩時間について詳しく解説した記事でも触れていますが、休憩時間中に業務指示を受けて作業した場合、その時間は労働時間に含まれます。
休憩を新たに設定するか、その分の時給を加算してもらいましょう。
Q4:週40時間を超える残業の時給は?
A:割増賃金として時給の125%(1.25倍)が必要です。
例:基本時給1,200円 × 1.25 = 1,500円
Q5:「シフト表に書いてない残業」を求められたら?
A:理由を聞いた上で、判断してOKです。
正当な理由(急な人手不足、業務トラブルなど)であれば、協力するのも良いでしょう。 ただし、いつも予定外の残業を求められるなら、シフト体制に問題があります。
その場合は、シフトの決め方について解説した記事と合わせて、面接時に「シフト時間は厳密か」を確認するのが大切です。
まとめ:労働時間を守ることは自分を守ること

自分を守るために知っておきたい3つのこと
1. コンビニでも残業は起こりうる
- アルバイトだからといって、残業がないわけではない
- 人手不足、納品時間、引き継ぎなど、発生理由は様々
- 毎回のように残業が起きるなら、店舗運営に問題がある
2. 残業代は「働いた分だけ」支払われるのがルール
- 1分でも時給超過時間は記録されるべき
- 法定残業(1日8時間超)でなくても、シフト超過分は時給計上対象
- グレーゾーンが多いため、自分で記録を取ることが大切
3. サービス残業を防ぐには、記録と伝え方が大事
- タイムカード後の作業は、たとえ5分でも「指示」なら労働時間
- 自分で勤務記録をメモしておく
- 「残業になる」と早めに店長に伝える姿勢が重要
法律と現場のバランスを理解しよう
コンビニ業界は「時間外労働が多い業界」として知られています。 ただし、それは「違法が当たり前」ということではなく、「工夫次第で減らせる」というのが私の経験からの教訓です。
給料日、シフト決め、休憩時間と同様に、労働時間の管理はあなたの大切な権利です。
「働く」ことは対等な取引
バイトだからこそ、労働条件をきちんと守ってくれる環境を選ぶことが大切です。
- 残業代がきちんと支給される
- サービス残業が常態化していない
- 勤務時間内に業務が完結する工夫がされている
こうした店舗は、スタッフから信頼を得ており、長く働き続けやすいです。
もし違和感を感じたら、まずは信頼できる社員や本部に相談してみてください。 それでも解決しなければ、各地域の労働基準監督署に相談することも選択肢の一つです。
コンビニバイトで充実した経験を得るために、労働条件の確認と理解は欠かせません。 自分を大切にしながら、気持ちよく働いてくださいね。
何かご質問があれば、いつでも「コンビニぐらし」でお待ちしています!